も雪の中に埋まった。も少しで帰って来れないところだった。彼はもう何も考えないように、身を疲らしきらせようとしていた。しかしそれも成功しなかった。ただときおりまれに、がっかりした数時間の睡眠を得た。
 ただ一つの生き物が彼の存在を気に止めてるようだった。それはサンベルナール種の老犬で、クリストフが家の前の腰掛にすわっていると、眼の血走ったその太い頭を、彼の膝《ひざ》へもたせに来た。二人は長い間たがいに見合った。クリストフはその犬を退けなかった。彼は病気のゲーテのように犬の眼を不安に思うことが少しもなかった。彼はゲーテのようにその眼へ叫びかけたい気は起こさなかった。「あっちへ行け!……この蛆《うじ》虫め、貴様がどんなにしたって食いつかれるものか!」
 それよりも彼はむしろ、嘆願的なうっとりしてるその眼からながめてもらいたかったし、その眼に力を添えてやりたかった。彼はその眼の中に、哀願してるとらわれの魂を感じた。
 そのとき彼は、苦悩に浸され、生きながら人生からもぎ離され、人間の利己心を取り去られていたので、人間から犠牲にされたもろもろのものに気づき、他物を殺戮《さつりく》して人間が勝利を得
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