廃を認めた。彼女のうちにと同じく、自分のうちにも、死の影が印せられてるのを認めた。そして考えた。
「俺の仕業なのか? いやそうじゃない。人を狂わせ人を滅ぼすところの、残忍なる主宰者の仕業だ。」
家の中はがらんとしていた。ベービは外に出かけて、その日の出来事を近所の者たちに話していた。時は過ぎていった。五時が打った。やがてもどってくるアンナのことを考え、来かかってる夜のことを考えると、クリストフはある恐怖にとらえられた。今夜はもう同じ屋根の下にじっとしてる力がなさそうな気がした。自分の理性が情熱の重みの下にぐらつきだすのを感じた。何をしでかすか自分でもわからなかった。いかなる代価を払ってもアンナを得たいということ以外には、何を欲してるのか自分でもわからなかった。先刻窓の下を通っていったあの惨《みじ》めな顔のことを思った。そしてみずから言った。
「この俺《おれ》自身から彼女を救い出すべきだ!……」
意志の力がさっと吹き起こった。彼は机の上に散らかってる幾|綴《つづり》かの紙を引っつかみ、それを紐《ひも》で結《ゆわ》え、帽子と外套とを取り、外に出かけた。廊下で、アンナの室の扉《とびら》に
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