がすぐに、自分をとがめることでさらにも一人の男を不幸にするという考えから引き止められた。と同時にまた情熱からも脱せられなかった。彼はアンナの室の前の廊下をうろついた。そして扉《とびら》に近づく足音が室の中に聞こえるや否や、自分の室に逃げていった。
 ブラウンとアンナとが午後に外出したとき、彼は自分の室の窓掛の後ろに隠れて、二人を窺《うかが》った。彼はアンナを見た。いつもあんなに身体をつんとして高振っていたアンナが、背をかがめうなだれて黄色い顔色になっていた。すっかり年をとって、夫にきせてもらった外套と肩掛との重みに堪えかねていた。醜くなっていた。しかしクリストフは彼女の醜さを見ないで、その惨《みじ》めさばかりを見てとった。そして彼の心は憐憫《れんびん》と愛情とで満ちあふれた。彼女のところへ駆けてゆき、泥《どろ》の中にひれ伏し、彼女の足に、情熱のため害されたその身体に、唇《くちびる》を押しあて、彼女の許しを乞《こ》いたかった。そして彼は彼女をながめながら考えた。
「俺《おれ》の仕業は……あのとおりだ!」
 しかし彼の眼は、鏡の中で自分自身の面影に出会った。そして自分の顔立ちの上に、同じ荒
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