革命者もしくは反革命者になったのであって、みずから建設に協力してきた文学上の流行に、今は諦《あきら》めの念で従っていた。
革命のそういう有産階級の小さな前衛隊の中で、オリヴィエが出会ったもっとも奇体な人物は、臆病《おくびょう》のために革命家となった人々だった。
彼の眼前にいるその典型は、ピエール・カネーという男だった。富裕な中流階級に属していて、新思想にまったく理解のない保守的な家柄だった。代々裁判官や役人をしていて、政府に不平を並べたり免職されたりして名高くなった家柄で、教会に迎合し、ごくわずかではあるがしかしよい考えをもってる、マレーの大きな中流階級だった。カネーは無為|倦怠《けんたい》のために結婚した。相手の女は貴族の名前をもっていて、彼と同じくらいによい考えをもっていたが、彼以上の考えをもってはしなかった。ところが、たえず自分の自惚《うぬぼれ》と不満とを噛《か》みしめてるその頑迷《がんめい》な偏狭な時勢遅れの社会は、ついに彼をいらだたせた――妻が醜くてうるさい女だっただけになおさらだった。中庸な知力とかなり開けた精神とをもってた彼は、自由にたいする憧《あこが》れをいだいて
前へ
次へ
全367ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング