の相好《そうごう》をくずしていた。ピストルは寝床の上に彼女の前に落ちていた。彼女は訴えるように繰り返していた。
「クリストフ!……弾《たま》が出ません!……」
彼は武器を取り上げた。長く忘れられてたために錆《さ》びていた。しかし作用が狂ってはいなかった。おそらく弾薬が空気のためにいけなくなってたのだろう。――アンナはピストルのほうへ手を差し出した。
「もうたくさんです!」と彼は嘆願した。
彼女は命令した。
「弾《たま》を!」
彼は弾を渡した。彼女はそれを調べて、中の一つを取り、なお震えつづけながら装填《そうてん》し、ふたたび武器を胸にあてがい、そして引き金を引いた。――やはり発射しなかった。
アンナは室の中にピストルを投げ出した。
「ああ、あんまりだ、あんまりだ!」と彼女は叫んだ。「死ぬことも許されない!」
彼女は夜具にくるまってもがいた。気が狂ったかのようだった。彼は彼女を抱き寄せようとした。彼女は声をたてて押しのけた。しまいに神経の発作に襲われた。彼はそのそばに朝までついていた。彼女もついに気が静まった。しかし息もつかず、眼は閉じ、額や顳※[#「需+頁」、第3水準1−94
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