かい》がなかった。やはり世論を尊重していた。世論の判決を、それが自分に向かって下されるときでさえ承認していた。それが自分の本心と背馳《はいち》するならば、自分の本心のほうが誤りであるとしたかもしれない。彼女は町の人々を軽蔑《けいべつ》していた。しかも町の人々から軽蔑されることは堪えがたかった。
そして、公衆の悪口にあふれ出る機会を与える時期が来かかっていた。謝肉祭《カルニヴァル》が近まりつつあった。
この町では、謝肉祭は、この物語の起こってるころまでは、放縦|苛辣《からつ》な古い性質をなおもっていた――(その後になると非常に変わってはきたが。)理性の軛《くびき》に否応なしに縛りつけられてる人の精神を、勝手気ままに解き放すというのが、謝肉祭の起原であるから、その起原に忠実である謝肉祭は、理性の番人たる風俗や掟《おきて》が重々しく君臨してる時代や地方において、もっとも横暴をきわめるのであった。それでアンナの町は、そういう選まれたる土地の一つとなるのが当然だった。道徳上の厳格主義が人の身振りを麻痺《まひ》させ声をふさぐことが多ければ多いほど、謝肉祭の数日間、ますます身振りは大胆になり声
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