りに反発を覚えた。彼は敗北を承知しなかった。彼は自殺を軽蔑《けいべつ》していて、偉大な生命に憐《あわ》れな短縮的な結末を与えることを、どうもあきらめかねた。アンナのほうは、永遠の死滅へ至る一つの死という観念を、どうして自発的に受けいれ得たろうか? しかし死へ至るべき必然の事情が二人を追窮していた。二人の周囲の世界はしだいに狭まってきた。

 ある朝、クリストフは裏切りの行ないをして以来初めて、ブラウンと二人きりになった。それまで彼はうまくブラウンを避けていた。ブラウンと出会うことは堪えがたかったのである。彼はむりにある口実を設けて握手しなかった。食卓で彼のそばにすわりながら、むりにある口実を設けて食べなかった。食物が喉《のど》に通らなかった。彼の手に握手し、彼のパンを食べ、ユダの接吻《せっぷん》を与えるとは!……そしてもっともたまらないことは、自分自身にたいする軽蔑《けいべつ》の念ではなくて、もしブラウンが知ったらどんなに苦しむだろうかという心痛だった……。その考えが彼を悶《もだ》えさした。憐れなブラウンはけっして復讐《ふくしゅう》もしないだろうし、おそらく二人を憎むだけの力もないだろ
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