彼は恐ろしさに飛び上がった。
「アンナ!」と彼は言った。
彼女は陰鬱《いんうつ》な様子で窓を見つめた。
「アンナ!」と彼は繰り返した。「とんでもないことを! 殺すのはあの人をではない!……あの人はいい人です……。」
彼女も繰り返した。
「あの人をではない。そうです。」
二人はたがいに見合った。
ずっと前から二人はそのことを知っていた。何が唯一の出口であるかを知っていた。虚偽のうちに生きるのが堪えがたかった。そしていっしょに逃げ出すことはできそうになかった。それがなんの解決にもならないことを知らないではなかった。なぜなら、もっともひどい悩みは、二人を隔ててる外部の障害にあるのではなくて、彼らのうちに、彼らの異なった魂のうちにあるのだった。二人は別々に生きることができないと同様に、いっしょに生きることもできなかった。二人は行きづまっていた。
そのとき以来、二人はもう接し合わなかった。死の影が二人の上にさしていた。二人はたがいに犯しがたいものだった。
しかし二人は期日を定めることを避けた。「明日、明日……」と言っていた。そしてその明日から眼をそらしていた。クリストフの強い魂はしき
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