めてる息を聞きとった。彼女はにわかに向き返って、彼の首を両腕で抱いた。
「ああクリストフ!」と彼女は言った、「私あなたを苦しまして……。」
 初めて彼は、彼女からそういう憐《あわ》れみの声を聞いたのだった。
「許してください。」と彼女は言った。
 彼は言った。
「おたがいに許し合いましょう。」
 彼女はもう息がつけないかのように身を起こした。寝床の中にすわり、がっかりして背をかがめて、彼女は言った。
「私はもう駄目《だめ》……それが神の心だから。私は神に見捨てられたのです……。神に反対して私に何ができましょう?」
 彼女は長くそのままでいた。それからまた横になって、もう少しも動かなかった。仄《ほの》かな明るみが黎明《れいめい》を告げた。薄ら明かりの中に、彼は自分の顔に接してる痛ましい顔を見てとった。
 彼はささやいた。
「夜が明けた。」
 彼女は身動きもしなかった。
 彼は言った。
「よろしい、構やしない。」
 彼女は眼を開き、たまらなく懶《ものう》い表情で床から出た。寝台の縁に腰かけて、床《ゆか》板をながめた。
 何の色合いもない声で言った。
「私昨夜あの人を殺そうかと思った。」
 
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