っとして動かなかった……。クリストフはもう息もつけなかった。びっしょり汗をかいた。戸外では雪片が、翼のように窓ガラスを掠《かす》めていた。ある手が扉《とびら》を探りあてた。扉は開いた。そして入り口に白い姿が現われて、そっと進んできた。寝台から数歩のところで立ち止まった。クリストフの眼には何にもわからなかった。しかし彼は彼女の息を聞きとった。そして自分の心臓の動悸《どうき》も聞こえた……。彼女は寝台のそばへ来てまた立ち止まった。二人の顔はすぐそばに接していて、息が交じり合った。二人の眼は暗闇の中で相手がわからずに、たがいに捜し合った……。彼女は彼の上に倒れかかった。そして二人は一言も発せずに、沈黙のうちにひしと抱き合った……。

 一時間、二時間、一世紀もたった。家の戸が開いた。アンナは二人を結びつけてる抱擁から身を脱し、寝床からすべりぬけ、来たときと同様に一言もいわずに、クリストフのもとを去った。彼女の素足が床板《ゆかいた》を小早く掠めて遠ざかってゆくのを、彼は耳にした。彼女は自分の室にもどった。ブラウンが帰ってきてみると、彼女は寝床にねていて、眠ってるようだった。そして彼女はそのまま
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