った。「他処」をながめていた。食後間もなく居間へ退いた。クリストフもブラウンと二人で残っておれないで、自分の室へ退いた。
 十二時ごろ、医者のブラウンはもう寝ていたが、ある病人に呼びつけられた。クリストフは彼が階段を降りて外出するのを聞いた。五、六時間前から雪が降り出していた。人家も街路も雪に埋もれていた。空気は綿をつめ込まれてるかのようだった。戸外には足音も馬車の音もしなかった。町じゅうが死んでるかのようだった。クリストフは眠れなかった。ある恐怖を感じて、それが刻々に募ってきた。身動きすることもできなかった。寝床の中に仰向けに釘《くぎ》付けになって、眼を見開いていた。白雪に覆《おお》われた地面や屋根から発する金属性の明るみが、室の壁には漂っていた……。あるかすかな物音に、彼はぞっと震え上がった。彼の昂《たか》ぶった耳なればこそそれを聞きとったのである。廊下の板にごくかすかに物の擦《す》れる音だった。クリストフは床の中に身を起こした。軽い音は近寄ってきて止まった。一枚の板が軋《きし》った。扉《とびら》の向こうに人がいた。そして待ってるのだった……。数秒の間、おそらく数分の間、まったくじ
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