の姿で、眠りついたブラウンのそばで、狭苦しい寝床に、眼を見開き息を凝《こ》らしながら、夜通しじっとしていた。もうこれまでに彼女は、そういうふうにして幾夜過ごしたことだったろう!
クリストフも眠りはしなかった。彼は絶望に沈んでいた。彼は元来、恋愛の事柄については、ことに結婚の事柄については、極端に厳粛な考えをいだいていた。姦淫《かんいん》を興味の中心とするような芸術作家の軽佻《けいちょう》さを、憎みきらっていた。姦淫は彼に嫌忌《けんき》の情を起こさせるのだった。その気持のうちには、彼の平民的な粗暴さと精神の高潔さとが結び合わされていた。彼は他人の所有である婦人にたいしては、敬虔《けいけん》な尊敬と肉体的な厭気《いやけ》とをいっしょに感じた。ヨーロッパのある上流人らが行なってる犬のような混合生活は、彼の胸を悪くさした。夫が承知してる姦淫は、不潔きわまるものである。夫が知らずにいる姦淫は、主人を裏切り汚すために身を潜める放逸な下僕がするような、卑しむべき欺瞞《ぎまん》である。幾度か彼は、そういう卑劣を犯してる人々を見ると、容赦なく唾棄《だき》してきたことだろう! そういう不名誉な行ないを彼
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