嫌悪の情からであって、みずからおのれを苦しめてほとんど意地悪い快楽を覚えてるのだった。ただ一つ例外として不思議なことには、祖母と同じく冷酷な彼女の精神は、どれほどの深さまでかは自分にもわからなかったが、音楽にたいして開かれていた。彼女は他の芸術には盲目だった。生涯《しょうがい》中に一枚の絵画もよくながめたことがないほどだった。造形美にたいしてはなんらの感覚ももたないらしかった。尊大な故意の無関心さで趣味を欠いていた。美しい身体の観念は、彼女には裸体の観念をしか呼び起こさなかった。言い換えれば、トルストイが語ってる百姓におけるがように、嫌悪《けんお》の感情をしか呼び起こさなかった。そうした嫌悪の情がアンナにはことに強かったわけは、自分の気に入った人たちとの関係において、審美的批判の穏やかな印象よりも、欲望の暗黙な針のほうをより多く、人知れず見てとっていたからである。彼女は自分自身の美貌《びぼう》については、自分の抑圧されてる本能の力についてと同じく、少しも気づいてはいなかった。否むしろ、それに気づこうとはしなかった。そして内心を偽る習慣によって、おのれを欺くことができたのだった。
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