ない人々のうちに宗教的信仰がもたらす自然の結果たる、人生にたいする軽蔑《けいべつ》的な陰鬱《いんうつ》な観念、などに染んだ。彼女は老祖母の眼にさえ誇張的だと見えたほど、信心に凝り固まった。やたらに断食や苦行を行なった。あるときなんかは、針のついた胸衣を着てみたこともあった。身を動かすごとに針が身体にささった。彼女は真蒼《まっさお》になった。しかし人々にはその理由がわからなかった。しまいに彼女は気絶しかけたので、医者が呼び迎えられた。彼女は診察されるのを拒んだ――(男の前で着物をぬぐくらいならむしろ死ぬほうがよかった)――けれどついに白状した。そして医者から激しく叱《しか》りつけられたので、もうふたたびしないと約束した。祖母はいっそう安全にするために、それ以来彼女の身支度を検査することにした。アンナはそういう苦行において、人が想像するような神秘な快楽を覚えてはいなかった。彼女はあまり想像力が豊かでなく、アッシジのフランシスや聖テレサなどの詩は理解できなかったろう。彼女の信心は陰気で物質的だった。彼女が我と我が身を苦しめるのは、来世に期待してる幸運のためにではなく、自分自身にたいする残忍な
前へ 次へ
全367ページ中236ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング