?」
 アンナは答えた。
「自分にもわかりませんわ。」
 彼は乱暴に言った。
「そんな歌い方をなさるというのは、いったいあなたの身内には何があるんでしょう?」
 彼女は答えた。
「あなたが私に歌わせなさるのですわ。」
「そうですかね? どうもぴったりはまってる。私が作者であるかあなたが作者であるか、わからないくらいです。であなたはこのようなことを考えてるんですか、あなたが?」
「わかりませんわ。歌うときにはもう自分でなくなると思いますの。」
「でも私には、歌っていられるときだけがほんとうのあなたであるように思われるんです。」
 二人は口をつぐんだ。彼女の頬《ほお》は軽く汗ばんでいた。彼女の胸は沈黙のうちに騒ぎたっていた。彼女は蝋燭《ろうそく》の光を見つめて、燭台《しょくだい》の縁に流れた蝋を無意識にかき取っていた。彼は彼女をながめながら鍵《キー》をたたいていた。二人は唐突な荒い調子でぎこちない言葉をなお少しかわした。それから平凡な話をしようとつとめ、つぎには深みへはいるのを恐れてまったく黙り込んでしまった……。
 翌日、二人はあまり口がきけなかった。一種の恐れをいだいて、そっと見合って
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