身の心の声であるように思えたからである。彼は彼女が歌ってるのを惘然《ぼうぜん》とうちながめた。そして初めて彼女を見てとった。粗野な光が輝いてる薄暗い眼、よく縁取られた唇《くちびる》をもってる熱情的な大きな口、健やかな真白な歯並みからもれるやや重々しい残忍な逸楽的な微笑、一方をピアノの譜面台の上にのせてる美しい強い両手、それから身体の頑健《がんけん》な骨組み、などを彼は見てとった。その身体は化粧のために萎縮《いしゅく》し、あまりに狭小な生活のために痩《や》せ細ってはいたが、まだ若くて強健でなよやかであることは、見通されるのだった。
彼女は歌いやめて、また以前の席へ行ってすわりながら、両手を膝《ひざ》の上にのせた。ブラウンは彼女をほめた。しかし柔らかみのない歌い方だったと思っていた。クリストフはなんとも言わずに、ただ彼女を見守っていた。彼女は彼から見られてることを知ってぼんやり微笑《ほほえ》んでいた。その晩二人は黙り込んでしまった。自分以上の出来栄えだったことを、あるいはおそらく初めてほんとうの自分を発揮したことを、彼女は知っていた。それがどうしてだかは彼女にもわからなかった。
その
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