堂の前の寂然たる広場にある街燈に、輝らされて光ってるのに、つかまりながら上っていった……。
 人間はなんのために生きてるのか、彼にはもうわからなかった。今まで目撃してきた闘争を思い起こすようなときには、肉体に釘《くぎ》付けされた信仰をもってるこの人類を、苦々しげに驚嘆するのだった。相反した観念がつぎつぎに起こり、相反した行動がつぎつぎに起こっていた――民主主義と貴族主義、社会主義と個人主義、浪漫主義《ロマンチスム》と古典主義《クラシチスム》、進歩と伝統――そして永遠にそうだった。新しい各時代は、十年足らずのうちに燃えつきるにもかかわらず、自分だけが絶頂に達したものだと同じ意気込みで信じていて、石を投じては先人を打倒していた。そして騒ぎたて、叫びたて、権勢と光栄とを掌握し、こんどはみずから新来者の石の下に打ち倒されて、滅び失せてしまっていた。今やだれの番であるか?……
 クリストフにとっては、音楽の製作ももう避難所ではなかった。それは間歇《かんけつ》的で乱雑で目的がなかった。書くことをか? だれのために書くのか? 人間のためにか? しかし彼は激しい人間|嫌《ぎら》いの危機にさしかかってい
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