のりっぱな特徴の一つであって、苦悶《くもん》や死に面しても人々はそれを失わなかった。
この剛毅な市民は、自己の価値を知っていたから自己にはきわめて厳格であり、他人をさほど尊敬しなかったから他人にはさほど厳格でなかった。クリストフのように町に滞在している他国人、ドイツ人の教師や政治上の亡命者などにたいしては、かなり寛大な態度をさえ示していた。なぜなら、そういう連中は彼らに無関係だったから。そしてまた、彼らは才知を愛していた。進歩した観念にもたじろがなかった。自分の息子《むすこ》どもにはそれがなんらの影響をも与えないことを知っていた。彼らはその滞在客にたいして、冷淡な温厚さを示して敬遠していた。
クリストフはそういうことを人から力説されるに及ばなかった。彼はいらいらした神経過敏の状態にあって、心が真裸になっていた。至る所に利己主義と無関心とを認めがちであって、自分だけのうちに潜みたがっていた。
そのうえ、ブラウンの患者範囲や、彼の細君が属してるごく狭小な一団は、ことに謹厳な新教《プロテスタント》の小社会に属していた。クリストフはこの社会では、生まれはローマ教徒であり事実は無信仰者で
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