て来て、乱暴に縛《いまし》めを断ち切り、町の番人らを当惑さした。しかし彼らはきわめて利口だったので、その反抗者が卵のうちに窒息されない場合、それがいっそう強い場合には、あくまでそれを攻撃しようとはがんばらないで――(戦いはおぞましい爆発を招く恐れがあった)――それを買収した。画家だったらそれを美術館に入れ、思想家だったらそれを図書館に入れた。反抗者がいくら咽《のど》をからして無法なことを叫んでも甲斐《かい》がなかった。彼らは聞こえないふうを装った。いくら反抗者は自己の独立を抗弁しても、彼らの仲間に引きずり込まれた。そういうふうにして毒の効果は中和された。それは同種療法《ホメオパチー》のやり方だった。――しかしそういう場合はめったになかった。反抗者の多くは世間に現われなかった。それらの平穏な家の中に人知れぬ悲劇は潜んでいた。家族の者が、なんとも訳を言わずに静かな足取りで、河に身を投げに出かけることもあった。あるいは精神を立て直すために、半年も室に閉じこもったり、細君を療養院に入れたりした。そしてあたかも当然の事柄でも話すように、沈着な態度で平気にそのことを話していた。その沈着こそ、この町
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