はよろめき、唸《うな》りながら胸を押えた。あるとき、彼はピアノについて、昔のような熱心さで、ベートーヴェンの一節をひいていた……とにわかに、ひくのをやめ、そこに倒れ伏して、肱掛椅子《ひじかけいす》の布団《ふとん》に顔を埋めながら、叫び泣いた。
「ああ、君……。」
 もっともいけないのは、「すでに生きた」という印象だった。彼はたえずその印象を受けた。同じ身振り、同じ言葉、同じ経験の不断の反覆を、いつも見出した。彼はすべてのことを知っていたし、すべてのことを予見した。昔のある面影を思い起こさせるような顔だちは、昔彼がその人から聞いたと同じ事柄を、言おうとしていた――(彼は前もってそれを確かに知り得た)――そして実際言っていた。同じような人々は、同じような経過をとって、同じ障害にぶつかり、同じく身を磨《す》りへらしていた。「恋のやり直しほど世に懶きものはない[#「恋のやり直しほど世に懶きものはない」に傍点]」ということが真であるとするならば、すべてのやり直しはさらにいかほど懶いことであろう! それは人の気を狂わせるようなものだった。――クリストフはそれを考えまいとつとめた。生きるためにはそれ
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