を考えないことが必要だったからであり、そして彼は生きたかったからである。それこそ、恥辱の念からまた憐憫《れんびん》の念から自己を知りたがらない痛ましい欺瞞《ぎまん》であり、底に隠れてる不可抗な生の欲求である。慰安がないことを知りながら、慰安を創《つく》り出す。生には存在理由がないことを知らせられながら、生きる理由をこしらえ出す。自分以外のだれにもかかわりのないときでさえ、自分は生きなければならないと思い込む。必要によっては、死者も自分に生きよと励ましてるのだと想像するだろう。そして実は、言ってもらいたいと思う言葉を死者に無理に押しつけてるのだということを、みずからよく知っているのである。なんたる惨めなことであろう!……
クリストフはまた自分の道を進みだした。彼の足取りは昔の確実さを回復したかのようだった。心の扉《とびら》は苦悶《くもん》にたいしてまた閉められた。彼はその苦悶をけっして他人に語らなかった。彼自身も苦悶と差し向かいになることを避けた。彼は落ち着いてるように見えた。
ほんとうの苦しみは、それがみずからこしらえた深い寝床の中に、平静な様子で横たわって、あたかも眠ってるがよ
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