ら差し出さるればなお結構ですわ。さもなければ、無しで済ますだけのことです。お菓子がないからと言って、よいパンをよくないとするわけにはゆきません。まして長い間堅いパンばかり食べてきましたおりにはねえ!」
「それにまた、」と母は言った、「毎日パンが食べられないような人もたくさんありますよ。」
 セシルが男を信じないのにはいろいろ理由があった。数年前に死んだ父親は、気の弱い怠惰者《なまけもの》だった。妻や家族の者たちにたいへん迷惑をかけたのだった。セシルにはまた一人の兄があった。それが悪いほうへそれてしまっていた。どうなってるかだれにもよくわからなかった。ごくまれにやって来ては金の無心をした。皆は彼を恐《こわ》がり、恥ずかしいと思い、いつどんな噂《うわさ》を聞くかわからないとびくびくしていた。それでもなお彼を愛していた。クリストフは一度彼に出会った。そのときクリストフはセシルのところにいた。呼鈴を鳴らす者があった。母親が扉《とびら》を聞けに行った。隣の室で激しい声の会話が起こった。セシルは心配そうな様子をしていたが、こんどは自分も出て行って、クリストフを一人置きざりにした。言い争いがつづいて
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