さつ》をかわして、それぞれ自分の家へ向かった。二人とも切なかった。しかしそれは悲しみと安慰との混ざり合った感情だった。クリストフは自分の室に一人ぽっちで考えた。
「俺《おれ》のよき半分が幸福でいるのだ。」
オリヴィエの室は少しも様子が変わっていなかった。彼が旅から帰ってきて新しく住居を構えるまでは、その道具や記念品をクリストフのところに残しておくことが、二人の間の約束だった。彼はなおそこにいるかのようだった。クリストフはアントアネットの肖像をながめ、それをテーブルの上に置き、それへ向かって言った。
「ねえ、あなたも満足ですか。」
彼はしばしば――しばしばすぎるほど――オリヴィエへ手紙を書いた。オリヴィエからはあまり手紙が来なかった。来た手紙も素気《そっけ》ないものであって、しかもしだいに気乗りのしないものとなっていった。彼はそれに力を落としたが、しかし当然のことだと思い直した。そして二人の友情の未来については心配していなかった。
彼は孤独にまいりはしなかった。それどころか、自分の趣味に相当するだけの孤独を得られなかった。彼はすでにグラン[#「グラン」に傍点]・ジュールナル[#「
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