ェー氏は停車場まで送っていった。見ると二人は、残り惜しさのない快活なふうで、今か今かと出発を待ちわびてる気持を隠さなかった。オリヴィエは青春の年ごろのような様子だったし、ジャックリーヌは小娘のような様子だった……。ああかかる出発の、やさしい憂愁さよ! 父は自分の娘が、他人によって、そしてなんのためにか……そして永久に自分のもとから遠くへ、連れ去られるのを見ては、うら悲しく思うのである。しかし彼らは、歓《よろこ》ばしい解放の感情をしか覚えない。もはや人生にはなんらの障害もない。もはや何物も彼らを引き止めない。あたかも彼らは最高峰に達してるがようである。今や死ぬこともできるし、すべてが自分の手中にあるし、何も恐るべきものはない……。その後になって、人はそれが一つの宿場にすぎなかったことに気がつく。道はまたつづいて、山のまわりを回る。そして第二の宿場に達する者はごく少数である……。
汽車は夜の中へ二人を運び去った。クリストフとランジェー氏とはいっしょに帰っていった。クリストフは意地悪げに言った。
「これでもう私たちは一人者になりました。」
ランジェー氏は笑いだした。二人は別れの挨拶《あい
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