ください。」
オリヴィエは狼狽《ろうばい》したが、しかし感動させられて、反対を唱えようともしなかった、幸いにもクリストフがそばにいた。普通なら彼がいちばん無法だった。がそのとき彼は二人を諭《さと》した。あとでどんな醜聞が起こるか、二人はどんな苦しい目に会うか、それを説き聞かした。ジャックリーヌは怒って唇《くちびる》を噛《か》みしめながら言った。
「そうなったら、死ぬばかりですわ。」
その言葉はオリヴィエを恐れさせるどころか、かえって決心の臍《ほぞ》を固めさせることとなった。クリストフは一方ならぬ骨折りをして、二人の狂人に少し辛抱させることにした。絶望的な手段をとる前に、他の手段を講じてみる必要があった。ジャックリーヌは家に帰らなければいけなかった。そして、彼がこれからランジェー氏に会いに行って、二人のために弁護してみることにした。
奇態な弁護人だった。彼が一言いい出すや否や、ランジェー氏は外に追い出そうとした。けれどつぎには、事態の滑稽《こっけい》さに心ひかれて、それを面白がった。そしてしだいに、相手の真剣さやまっ正直さや確信に、のまれていった。けれどもなお取り合おうとしないで、
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