をも貧乏をも同じ心で受けいれるのが、自然なことではないだろうか。そして、愛する者が非常に喜んで与えようとしてる、その恩恵を拒むのは、けちくさい感情ではないだろうか……。それでも、彼女はオリヴィエの意図に賛成した。それが厳粛な楽しくないものであるために、かえって彼女の心を決した。精神的に勇壮な行ないをしたいというかねての願望を、ちょうど満足さる機会であるように思えた。叔母《おば》を失ったために惹起《じゃっき》され恋愛のために激化されてる、周囲の世界にたいする傲慢《ごうまん》な反抗心のために、彼女はついに自分の性質のうちでこの不思議な熱情と矛盾するものはことごとく、否定してしまっていた。ごく純潔で困窮で幸福に輝いてる生活の理想へ向かって、自分の一身を弓のように緊張さしていた……。あらゆる障害も、将来の凡々たる境遇も、すべてが彼女にとっては喜びだった。ああそれはどんなにかりっぱな美しいことであろう!……
 ランジェー夫人は、自分のことばかりにあまり気をとられていて、周囲に起こってることには大して注意を払っていなかった。このごろでは自分の健康のことばかり考えていた。始終いろんな病気を想像して気
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