二人は腰をおろした。そして彼は、自分の心にあるすべてのことを、二人にたいするすべての愛情を、ピアノでひいた。それが済むと、三人とも黙ったままじっとしていた。やがて、彼は立ち上がって二人をながめた。彼はいかにも善良な様子で、二人よりずっと年上でしっかりしてる様子だった。ジャックリーヌは初めて、彼がどういう人物であるかを知った。彼は二人を両腕に抱きしめて、そしてジャックリーヌに言った。
「あなたはオリヴィエをほんとに愛してくれますね? 二人ともよく愛し合うでしょうね?」
二人はしみじみと感謝の念を覚えた。しかしそのあとですぐに、彼は話をそらし、笑い出し、窓のところへ行き、庭へ飛び出した。
その日以後彼はオリヴィエに向かって、ジャックリーヌの両親へ結婚の申し込みをするように勧めた。オリヴィエは断わられそうなのにびくびくして、申し込みをなしかねた。クリストフはまた、何か地位を捜せと彼を促した。ランジェー夫妻から承諾を得たと仮定しても、彼がみずからパンを得るだけの身分になっていなければ、ジャックリーヌの財産をもらうわけにいかなかった。オリヴィエも同じ考えだった。けれどもただ、金のある結
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