声に先立つ隠れたる名声があり、客間の漠然《ばくぜん》たる風評があり、時至れば広告的論説となって現われてくる、イーリアス以上のもの出づ[#「イーリアス以上のもの出づ」に傍点]があり、新しい偶像の名前をもっとも堅い鼓膜にも響き通らせる、太鼓の太音があるのである。それにまた時とするとその大らっぱは、賞賛の対称たる当人のもっとも親しいもっともよい友人らを逃げ出させることすらある。けれどその責任は友人らのほうにもある。
 ところでオリヴィエは、グラン[#「グラン」に傍点]・ジュールナル[#「ジュールナル」に傍点]の評論に関係があった。彼は人々がクリストフにたいして示してる興味を利用し、巧みな報道によってそれを煽《あお》りたてさせるだけの注意をとった。用心してクリストフを直接に新聞記者と接触させはしなかった。何か面白くないことが起こりはすまいかと恐れたのだった。けれど、グラン[#「グラン」に傍点]・ジュールナル[#「ジュールナル」に傍点]の求めにより、策略をもってクリストフに気づかれないようにして、彼と一人の探訪員とをある珈琲店の食卓で出会わした。それらの用心は、ますます人の好奇心を刺激し、クリス
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