甘く深い幸福!……
 ジャックリーヌは尋ねた。
「お姉《ねえ》さんはあなたに似ていらしたの?」
 オリヴィエはぎくりとした。彼は言った。
「どうして姉のことを言うんですか。あなたは知ってたのですか。」
 彼女は言った。
「クリストフさんから聞きましたの……。あなたはたいへんお苦しみなすったのでしょう?」
 オリヴィエは頭をたれた。あまりに感動していて返辞ができなかった。
「私もたいへん苦しんだことがありますの。」と彼女は言った。
 彼女は自分の味方だったなつかしい故人マルトのことを話した。どんなにか泣いたことを、死ぬほど泣いたことを、胸いっぱいになって話した。
「あなた私を助けてくださいね。」と彼女は哀願する声で言った。「私を助けて、生きさして、いい者になして、いくらかあの方のようになさしてくださいね。あのかわいそうなマルト叔母《おば》さんを、あなたも愛してくださいますわね?」
「私たちは亡《な》くなった二人の人を愛しましょう、その二人はたがいに愛し合ってるでしょうから。」
「ああお二人とも生きていらしたら!」
「生きていますよ。」
 二人はたがいにひしと寄り添っていた。胸の動悸《どう
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