に思われた。彼女は魂の憂鬱《ゆううつ》な薄明を求めていたし、それを好んでるとみずから思っていた。クリストフのうちにはあまりに白日の光が多すぎた。けれど彼女は彼と話を交えた。そして彼は彼女にオリヴィエの噂《うわさ》をした。彼は自分の身に起こるあるゆる幸福を友にもあずからせたかったのである。そして彼がオリヴィエのことをいろいろ話すので、ジャックリーヌは、自分の思想と一致してる魂を描き出し、人知れず心を動かされて、オリヴィエをも招待してもらった。オリヴィエはすぐには承諾しなかった。そのためにかえってクリストフとジャックリーヌとの話の中で、想像のオリヴィエの姿がゆっくりとこしらえ上げられてしまった。オリヴィエがついに思い切ってやって来たときには、もとよりその想像の姿どおりだった。
 オリヴィエはやって来たけれど、ほとんど口をきかなかった。口をききたくなかったのである。そして、彼の怜悧《れいり》な眼や微笑や繊細な物腰や、彼を包み彼が放射してる落ち着きなどは、ジャックリーヌをひきつけずにはおかなかった。それとまったく反対なクリストフの様子は、オリヴィエをますます引き立たしていた。ジャックリーヌは心
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