も他人と同じように泥濘《でいねい》の中におぼれてしまうだろう……。ああどうあってもこんな世界から逃げ出したい! 助けてほしい、助けてほしい!……
かくて彼女は、いらいらした孤独の念と、熱烈な嫌悪《けんお》の情と、ある神秘な期待とのうちに、日々を過ごしながら、未知の救い主[#「救い主」に傍点]のほうへ両手を差し出してるおりに、ちょうどオリヴィエに出会ったのだった。
ランジェー夫人は、その冬、もてはやされてきた音楽家のクリストフを、招待しないではおかなかった。クリストフはやって来たが、例によって歓心を得ようとはつとめなかった。それでもランジェー夫人はやはり彼を面白い人物だと思った。――流行児である間は何をしても構わなかった。いつでも人から面白い男だと思われるのだった。ただしそれも数か月間のことである。――ジャックリーヌはそれほど面白いと思う様子を見せなかった。クリストフがある人々から讃《ほ》められてるということだけでもすでに、彼女をあまり心服させなかった。そのうえ、彼の粗暴な態度や、強い物の言い方や、快活な様子などは、彼女の気持を害した。彼女のような精神状態では、生の喜びは卑しいもの
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