――言うまでもなく恋愛の詩集だった。それは少女の心にやや近かった。事物を見て取りはしないで、欲望と愛惜の三稜鏡《プリズム》を通して想像していた。ちょうど彼女のように、古壁の割れ目からのぞいてるらしかった。しかし実は多くのことを知っており、およそ知るべきことはみな知っているのであって、ただそれをごくやさしい神秘的な言葉で包んでるのだった。それで、非常に注意してその抱衣を解きさえすれば、見出せる……見出せる……はずだった。が彼女は何にも見出さなかった。けれどいつも見出しかけてはいた……。
二人の好奇な少女は少しも飽きなかった。かすかにおののきながら低い声で、アルフレッド・ド・ミュッセーの詩句やシェリー・プリュドンムの詩句を繰り返した。その詩の中に敗徳の深淵《しんえん》が想像された。彼女らはそれを写し取り、その一節の中の隠れた意味を尋ね合った。時とするとなんの意味もないことがあった。そしてこの潔白な厚顔な十三歳の小娘たちは、恋愛について何にも知らないくせに、半ば冗談に半ば真面目《まじめ》に、恋と快楽とを論じ合った。そして教室では、教師――ごくやさしい丁寧な年とった小父《おじ》さん――の温情
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