ていて、いつもの例によって、その天才を窒息させようとつとめていた。それらの連中の考えはただ一つしかなくて、花を見れば花瓶《かびん》にさしたくなり――小鳥を見れば籠《かご》に入れたくなり――自由な人間を見れば奴僕になしたくなるのである。
クリストフは一時心迷ったが、すぐに気を取り直して、彼らを皆追い払ってしまった。
運命は皮肉なものである。無頓着《むとんじゃく》な者には勝手にその網の目をくぐらせるが、疑い深い者、用心深い者、聡明《そうめい》な者にたいしては、なかなか取り逃がすまいとする。パリーの網の目にかかったのはクリストフではなくて、オリヴィエであった。
彼はクリストフの成功のおかげをこうむっていた。クリストフの名声は彼の上にも反映していた。六年以前からときどき書いていたもののためによりも、クリストフを見出した男として、前よりいっそう世に知られていた。それで、クリストフへ宛《あ》てられた招待の相伴《しょうばん》を受けた。そしてひそかにクリストフを監視するためについて行った。たぶん彼はその監視の務めにあまり気を取られて、自分自身を監視することは怠ってたに違いない。恋愛は通りかかっ
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