てるとは思わないかどうか、音楽は終極に達してるとは思わないかどうか、その他種々。クリストフとオリヴィエはそれをいっしょに笑った。しかしクリストフはヒューロン人みたいに粗野でありながら、嘲笑《あざわら》いながら、晩餐《ばんさん》の招待を承諾し始めたのだった。オリヴィエはみずから自分の眼を信じ得なかった。
「君が?」と彼は言った。
「そうさ。」とクリストフは揶揄《やゆ》的な様子で答えた。「美しい婦人を見に行けるのは自分ばかりだと、君は思っているのか。こんどは僕の番だよ。少し楽しみたいんだ。」
「楽しむって、君が!」
 実際のことを言えば、クリストフは長い間家に閉じこもって暮らしていたので、にわかに外に出たくてたまらなくなった。それにまた、新しい光栄の気を吸うと無邪気な喜びが感ぜられた。もとより彼はそういう夜会にはひどく退屈を覚え、皆ばかな奴らばかりだと思った。しかし家に帰ってくると、心と反対のことを意地悪くオリヴィエへ語った。そして方々の夜会へ出かけて行ったが、二度と同じ所へは行かなかった。二度の招待を断わるためには、ひどい無遠慮さでおかしな口実をもち出した。オリヴィエはそれに気を悪くした
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