なかった。
クリストフはそういうつまらない喧騒《けんそう》が厭《いや》になりだした。いつまでもつづくのかしらと怪しんだ。――けれど二週間もたつと、すっかりおしまいになった。新聞にはもう彼のことが書かれなくなった。ただ彼は世間に知られた。彼の名前が口にのぼるときには、「あれはダヴィデ[#「ダヴィデ」に傍点]の作者だ、ガルガンチュア[#「ガルガンチュア」に傍点]の作者だ、」と人は言わないで、「ああそう、グラン[#「グラン」に傍点]・ジュールナル[#「ジュールナル」に傍点]の男だ、」と人は言った。それが有名なるゆえんだった。
オリヴィエはクリストフのもとに来る手紙の数によって、また自分のところへまで反射的にやってくる手紙の数によって、クリストフが有名になったことを気づいた。歌劇脚本作者からの提議、音楽会主催者からの申し込み、多くは初め敵だった新しい味方からの友情表白、婦人からの招待、などがやってきた。また新聞の調査用として、いろんなことについてクリストフは意見を求められた。フランスの人口減少問題、理想主義芸術の問題、婦人のコルセットの問題、芝居の裸体問題、――ドイツは頽廃《たいはい》し
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