ルナル[#「ジュールナル」に傍点]の被保護者となったばかりで、すぐに他の新聞の悪口の的となった。未知の天才を他の新聞から発見されたことを承認するのは、新聞の品位に関することだった。ある新聞は激しく悪口を言った。グージャールは足下の草を人から刈り取られたのに憤慨して、彼の言葉によれば、事情を是正せんために評論を書いた。彼は旧友クリストフのことを馴《な》れ馴れしい調子で述べ、パリーで初めてクリストフを引き回してやったのは自分だとしていた。たしかにクリストフは天分の多い音楽家ではあるが、しかし――(旧友のよしみで彼はあえて言ったのである)教養に乏しく、独創性がなく、無法な傲慢《ごうまん》心をもっている。その傲慢心に滑稽《こっけい》なやり方でおもねるのは、かえって彼のために悪い。彼に必要なのはむしろ、思慮深い、博学な、明敏な、親切な、しかも厳格な、メントールのごとき指導者である――(それはグージャール自身のことを言ったものだった。)――また他の音楽家らは、嘲笑《あざわら》っていた。新聞紙の援助を受ける芸術家を軽蔑《けいべつ》しきってるらしいふうをした。そして奴隷的な徒輩[#「奴隷的な徒輩」に傍
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