からね。こちらではねつければ攻撃してくる……。意趣返しなんかは彼奴《あいつ》らにとって訳ないことなんだ。ちょっとしたことでも言えば、すぐにそれを利用するんだ。」
 クリストフは額《ひたい》に手をあてた。
「ああしまった!」
「またどうかしたのか。」
「扉《とびら》を閉めながら言ってやった……。」
「なんと?」
「帝王の言葉を。」
「帝王の?」
「そうだ、でなけりゃ、それに似寄った者の言葉を……。」
「困ったもんだね。明日になってみたまえ、第一ページに出てるよ。」
 クリストフはびっくりした。しかし翌日新聞を見ると、その記者がはいりもしなかった彼の部屋《へや》の記事と、交えもしなかった会話とが、掲載されていた。
 報道は広まるにつれて飾りたてられていった。外国の新聞では、反対の意味に面白くなされていた。フランスの記事が、クリストフは貧困中ギター用に編曲をしていたと伝えると、やがてクリストフはイギリスのある新聞から、自分が往来でギターをひいたことがあると教えられた。
 彼は賛辞ばかりを読んでるわけではなかった。なかなかそれどころではなかった。クリストフはグラン[#「グラン」に傍点]・ジュー
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