めに、彼の愛はある程度まで維持されていた。しかし、彼は繊細な感受性をそなえていたし、愛する者の心のなかに起こるすべての変動は彼の心にも伝わっていたので、ジャックリーヌが隠してる不安の情は彼にも感染してきた。
ある日の午後、彼らは田舎《いなか》を散歩した。前からすでに楽しかった。すべてが微笑《ほほえ》んでいた。しかし散歩に出るや否や、陰鬱《いんうつ》な懶《ものう》い悲しみが彼らの上に落ちかぶさってきた。冷えきったような心地がした。口をきくことができなかった。それでも強《し》いて話をした。しかし口に出す一語一語は、空虚を響かせるばかりだった。彼らはあたかも自動人形のように、何にも見も感じもしないで散歩を終えた。切ない気持で帰ってきた。黄昏《たそがれ》のころだった。部屋の中はがらんとしていて暗くて寒かった。彼らは自分たちの姿が見えないようにすぐには燈火もつけなかった。ジャックリーヌは自分の室に入って、帽子や外套《がいとう》もぬがないで、黙って窓ぎわにすわった。オリヴィエも隣の室でテーブルによりかかっていた。間の扉《とびら》は開いていた。彼らはたがいの息の音が聞こえるほど近かった。そして薄暗
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