もどり来るおりの、美《うる》わしい夕《ゆうべ》の夢想。風は灌木《かんぼく》の枝をそよがしている。湖水のように澄み渡った空には、銀色の月の仄《ほの》白い微光が漂っている。星が一つ流れて消える――心へ伝わるかすかなおののき――音もなく滅びる一つの世界。街道には二人のそばを、足を早めた無言の人影がまれに通り過ぎる。町の鐘は翌日の祭りを告げて鳴る。二人はちょっと歩みを止める。彼女は彼に身を寄せる。二人は言葉もなくたたずむ……。ああ、この瞬間のように、人生がこのままじっとしているならば!……彼女は溜息《ためいき》をもらして言う。
「なぜ私はこんなにあなたが恋しいのでしょう?……」

 彼らはイタリーへ数週間旅をした後、オリヴィエが教師に任命されたフランス西部の町に、身を落ち着けたのだった。彼らはほとんどだれにも会わなかった。何事にも興味を覚えなかった。やむを得ず訪問する場合には、その厭《いや》な冷淡さが無遠慮に現われたので、人々は気持を害したりあるいは苦笑をもらしたりした。どんな言葉も二人の上をすべり落ちてその心まで達しなかった。二人は若夫婦特有の横柄なしかつめらしさをそなえていて、人に向かって
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