る人の眼にただ輝ける跡をのみ残して空を過《よぎ》ってゆくように、流れ去る時間、春の懶《ものう》さで人を包む、なま温かい息吹《いぶ》き、肉体の金色の熱、日に照らされた愛の葡萄棚《ぶどうだな》、清浄な無羞恥《むしゅうち》、狂おしい抱擁、溜息《ためいき》や笑い、楽しい涙、おうそれら幸福の埃《ほこり》よ、汝から何が残るか? 汝は人の心にほとんど思い出の跡をもとどめない。なぜなら、汝がありし時には時間が存在していなかったのだから。
まったく同じような日々……。静かな曙《あけぼの》……。眠りの淵《ふち》から、からみ合った二つの身体が同時に浮かび出る。息を交えて微笑《ほほえ》める顔が、いっしょに眼を開き、たがいに見合わし、たがいに接吻《せっぷん》し合う……。朝の時刻の若々しい爽《さわや》かさ、燃ゆる身体の熱を鎮《しず》める新鮮な空気……。夜の快楽がその奥に響きをたててる、つきせぬ日々の快い夢心地……。夏の午後、畑の中で、天鵞絨《ビロード》のごとき牧場の上で、長い白楊樹《はくようじゅ》のさらさらと鳴る下で、うっとりとふける夢想……。腕と手とを組み合わせ、輝ける空の下を、愛の臥床《ふしど》へ連れだって
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