るばかりでは満足しなかった。彼はオリヴィエに向かって、文学にそれを適用せよと勧めた。
「現代の作家らは、」と彼は言った、「稀有《けう》なる人事や、もしくは、活動的な健全な人々の大社会の周辺にある、異常な一団の中にしかいない人物をばかり、描写しようと骨折っている。そういうふうに彼らはみずから人生の外に出ているので、彼らを打ち捨てて人々のいる所に行きたまえ。日々に見られる人々へ、日々に見られる生活を示したまえ。その生活こそ、海よりもより深くより広いのだ。われわれのうちのもっとも微賤《びせん》な者といえども、内に無限なるものをになっているのだ。人間たるの単純さをもってるあらゆる者のうちに、恋人のうちに、友のうちに、分娩《ぶんべん》の日の輝かしい光栄を苦痛で購《あがな》う女のうちに、人知れず身を犠牲にしてだれからも知られていない者のうちに、無限なるものがある。甲より乙へ乙より甲へと流れる、生命の波がある……。それら単純な人々の一人の単純な生活を書きたまえ。世界の第一日以来、みな同じようでしかも異なっており、みな同じ母の息子《むすこ》である、相ついで来る日々の、平穏な叙事詩を書きたまえ。それを単
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