を示すような、一つの眼つきや言葉を交えたりするだけで、彼らには十分だった。たがいに何一つ尋ねかけもせず、たがいに顔を見合わすこともしないで、二人はたえずたがいに見守っていた。愛する者は知らず知らずに、愛の相手の魂に則《のっと》るものである。相手の気持を害せず相手の全部でありたいという、ごく強い欲望をもってるので、不思議な急速な直覚力によって、相手の奥底のきわめてかすかな動きをも、すべて読みとってしまう。おたがいに透き通って見える。彼らはたがいにその存在を取り換え合う。顔だちはたがいに真似し合い、魂はたがいに真似し合う――奥深い力が、種属という悪魔が、突然|躍《おど》り出してきて、自分を縛《いまし》めている愛情の外皮を引き裂いてしまう、その日までは。
クリストフは小声で話し、静かに歩き、沈黙がちなオリヴィエの室の隣室で、音をたてまいと用心していた。彼は友情のために様子が変わっていた。かつて見られなかったほどの、幸福と信頼と若さとの表情をしていた。彼はオリヴィエを敬愛していた。オリヴィエは、それを身に余る幸福だとして恥ずかしく思わなかったら、自分の力を濫用して勝手な真似をするのは容易だっ
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