たろう。が彼はクリストフよりずっと劣ってると自分を見なしていた。クリストフも同様にみずから卑下していた。そしてこの相互の謙譲は、彼らの大きな愛情から来たものであって、さらに一つの楽しみだった。友の心のうちに多大の場所を占めてると感ずることは――それが身に余ることだと意識してもなお――非常にうれしいことだった。そして二人はたがいに、しみじみとした感謝の念を覚えていた。
オリヴィエは自分の書物をクリストフのといっしょにしておいた。もうその間の区別をたてなかった。ある本のことを話すときには、「僕の[#「僕の」に傍点]本」と言わないで、「僕たちの[#「僕たちの」に傍点]本」と言った。そして彼が共同の財産中に交えないで別にしておいた品物は、ごくわずかな数しかなかった。それは皆、姉の所持品だったものか、あるいは姉の思い出を帯びてるものだった。クリストフは愛情から来る敏感さで、間もなくそれに気がついた。しかしその理由は知らなかった。彼はかつてオリヴィエにその両親のことなどを尋ねなかった。もう両親がないことだけを知っていた。そして、愛情の上での多少高ぶった控え目から、友の秘密を探り出すことを避けたう
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