して許さなかった。彼らにとっては、音楽は演説と同じものだった。議会と同じものだった。演説者らは皆一時に、あたりの者に構わずに、最後まで口をきくのだった。いちいち聞き取れなくても平気だ。翌日の官報で皆読むことができるのである。音楽は読まれるためにできてるので、聞かれるためにできてるのではない。クリストフは、そういう水平派[#「水平派」に傍点]と垂直派[#「垂直派」に傍点]との間の論争を、初めて聞くと、皆狂人ばかりだと思った。連続軍[#「連続軍」に傍点]と重積軍[#「重積軍」に傍点]とのどちらかに味方せよと促されると、ソジーの名言ではないが、例の自分一個の名言で答えた。
「僕は諸君全部の敵だ。」
すると彼らはしつこく尋ねた。
「和声と対位法と、どちらが音楽ではよりたいせつか。」
彼は答えた。
「音楽がたいせつだ。まあ君らの音楽を示してくれ。」
彼らは自分らの音楽については、皆意見が一致していた。あまり長い名声を有する過去の大家を攻撃するか、さもなくばたがいに攻撃し合ってるくせに、一つの共通な熱情ではいつも一致していた。それは音楽上の熱烈な愛国心だった。彼らにとっては、フランスは偉大な
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