べて馬鹿だとののしっていた。彼らはたがいに似而非《えせ》文学者だとし、似而非学者だとしていた。理想主義だの唯物主義、象徴主義だの実物主義、主観主義だの客観主義、などという言葉をたがいに与え合っていた。クリストフは、パリーでもドイツと同じ喧嘩《けんか》を見出すのならば、何もわざわざドイツからやって来るには及ばなかったと、みずから言った。彼らはいい音楽に向かって、種々の異なった享楽法を与えてもらったことを感謝もせずに、自分の享楽法をしか容認しなかった。そして新しいリュトラン[#「リュトラン」に傍点]が、激しい論争が、当時音楽家らを両軍に分かっていた。すなわち対位法軍と和声軍と。ちょうど大ブーチャン[#「大ブーチャン」に傍点]と小ブーチャン[#「小ブーチャン」に傍点]とのように、一方は音楽は水平に読むべきものだと主張し、他方は音楽は垂直に読むべきものだと主張していた。後者の人々は、味のよい和音、汁気《しるけ》の多い連結、滋養分に富んだ和声、などばかりを問題にしたがっていた。あたかも菓子屋の噂《うわさ》をでもするように、音楽のことを話していた。前者の人々は、くだらない耳だけを問題とするのを、決
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