にすぎなかった。そして彼らのうちの最も優良な者にとっても、音楽を魂の自然の言葉だと考えることはいたってむずかしかったので、彼らは音楽をもって絵画の一分派だとするか、あるいはまた、音楽を科学の末に列せしめて、和声的構成の問題だけにしてしまいがちだった。かかる学者らは、当然過去の音楽家にまでさかのぼらずにはいられなかった。彼らはベートーヴェンのうちにも欠点を見出し、ワグナーをも攻撃した。ベルリオーズやグルックにたいしては熱罵《ねつば》を浴びせた。彼らにとっては、この流行の際に当たって、ヨハン・セバスチアン・バッハやクロード・ドビュッシー以外には、何者も存在しなかった。そして、近年あまりにもてはやされたこのバッハでさえも、すでに衒学《げんがく》的で陳腐《ちんぷ》であると見なされ始め、要するに多少子供っぽいのだと見なされていた。ごく秀《ひい》でた人々は、ラモーやまた偉人と言われてるクープランなどを、妙に賞揚していた。
それらの学者の間に、激しい争論が起こっていた。彼らは皆音楽家だった。しかし皆が同じ態度の音楽家でなかったから、各自に自分の態度だけがいいと称していた。そして仲間の者らの態度をす
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