。自分の小さな雑誌の中にとじこもっていた。一、二の例外を除いては、諸新聞雑誌は彼らの味方でなかった。彼らは怜悧な面白いりっぱな人々ではあったが、孤立してるために往々逆説に傾きやすく、また仲間だけで言論する習慣のために、仮借《かしゃく》なき批判と饒舌《じょうぜつ》とに傾きがちだった。――その他の批評家らも、和声《ハーモニー》の初歩を急速に覚え込んでいた。その新しく得た知識に感心していた。ちょうどジュールダンさんが文法の規則を学んだ時のように、彼らは自分の知識に恍惚《こうこつ》となっていた。
「デー、アー、ダ。エフ、アー、ファ。エル、アー、ラ……。ああ実にいい……。何かを知るのは実にいいことだ!……」
彼らが口にすることは、主題や副主題、陪音《ばいおん》や結合音、九度の連結や長三度の連続、などばかりだった。ある楽譜の中に展開する一連の和声《ハーモニー》に名前を与え得ると、得意然と額《ひたい》をふいていた。その楽曲を説明し得たような気がし、それを自分で書いたような気がしてるのだった。しかし実を言えば、学生がキケロの一ページに文法的な分解を施すのと同じく、彼らはその楽曲を学生語でくり返したの
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