楽を知ってるのだ。グージャールはすぐに必要な知識を得てしまった。その方法は簡単だった。音楽会で、あるいい音楽家かまたできるなら作曲家の隣りにすわって、演奏作品にたいする意見を吐かせることだった。そういう見習いを数か月やると、もうその方面のことに明るくなるのだった。鵞鳥《がちょう》の雛《ひな》でも飛べるようになるのだった。実際グージャールは鷲《わし》なんかではなかった。彼がその新聞にいかめしく書いた批評の馬鹿さ加減は、知る人ぞ知る! 彼はでたらめに聞いたり読んだりし、自分の鈍重な頭の中ですべてを混乱させ、そして他人に傲然《ごうぜん》と教訓を与えていた。洒落《しゃれ》まじりのいやに学者ぶった気障《きざ》な文章だった。彼は学生監みたいな心をもっていた。時とすると、ごくまれに無惨な反駁《はんばく》を招くこともあった。そういう場合には、知らない顔をして答弁すまいと用心した。彼は愚かな偽君子であるとともにまた粗笨《そほん》な人物であって、時の事情によってあるいは傲慢《ごうまん》になりあるいは穏和になった。公の地位か栄誉か(それによってのみ彼は音楽上の価値を確実に認定したがっていた)をもってさえおれ
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