廉恥な話を憤慨した。人々はそれに反対して、この話には少しも破廉恥な点はなく、自然な点ばかりだと言った。そしてこの話の女主人公も、ただ優美な婦人であるばかりでなく、卓越した女性[#「女性」に傍点]であるということに、皆の意見は一致した。ドイツ人は叫びたてた。それなら女性とはどういうものだと思っているのかと、シルヴァン・コーンは狡猾《こうかつ》に尋ねた。クリストフは罠《わな》を張られているのを感じた。しかし彼は奮激と確信とに駆られて、それにすっかり引っかかった。彼はそれらの嘲弄《ちょうろう》的なパリー人に向かって、自分の恋愛観を説明しだした。しかし適当な言葉が見つからずぐずぐずその言葉を捜し求め、記憶をたどってはほんとうらしからぬ表現をばかりあさり、とんでもないことを言い出しては聴《き》き手を愉快がらせ、しかもこの上なく真面目《まじめ》くさって、笑われてもさらに平気で、泰然と言いつづけた。いくら彼でも、厚かましく嘲笑されてることに気づかないではなかったが、それを気にかけなかったのである。ついに彼は、ある文句にはまり込んで、それから脱することができず、テーブルを拳固《げんこ》で一撃し、そして
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