設けられるという計画にたいして、憤慨してるのであった。数名の仲間が、全然敵方へ移った方が利益だと見て裏切ってしまったので、彼らは激怒の絶頂に達しているのであった。頭をたたき割りかねないような調子で話していた、「……堕落……裏切り……汚辱……売節……」などと。
 また他の者らは、現在の作家を攻撃してはいなかった。印税なしの出版で市場をふさいでる故人を攻撃していた。ミュッセの作品は近ごろ無版権となったので、あまりに売れすぎるらしかった。それで、過去の傑作を廉価に頒布《はんぷ》するのは、現存作家の商売品にたいする不公平な競争であって、それに対抗するために、過去の傑作には重税を課するという有効な政府の保護を、彼らは要求していた。
 彼らは両方とも議論をやめて、昨晩の興行で某々の作品が得た収入額に耳を傾けだした。両大陸に有名なある老練戯曲家の幸福に、うっとりと聞き惚《ほ》れた――彼らはその戯曲家を軽蔑《けいべつ》してはいたが、それよりもなお多くうらやんでいたのである。――彼らは作者の収入から、批評家の収入に移っていった。仲間の名高い一人の批評家が、ある通俗劇場の初回興行ごとにその提灯《ちょうちん
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